文字の大きさ標準きく

理事長あいさつ

宗像水光会総合病院 理事長 津留 英智

2022年を迎えて
~救急医療体制の在り方について~

 新年のご挨拶を申し上げます。中国武漢市で発症した新型コロナウイルス感染症による全世界的パンデミックからおよそ2年が経過しました。新型コロナワクチン接種も普及し明らかに死亡率は下がったと言えますが、敵もさるもの変異株として人類との共存をはかるべく、感染力を更に強化してしぶとく生き残ろうとしています。全世界的なワクチンの普及が求められるところではありますが、我先にとワクチンを独占し、全国民に4回目接種を始める国もあれば、接種後進国、開発途上国へのワクチン供給は後手に回り、新型コロナはこのようなワクチン未接種の土地で変異株として姿を変え、先進国に再拡散していくと言う悪循環が続いているように思えます。全世界が改めてその連帯感を高め、弱者の国を少しでも思いやる心が、このパンデミックを一刻も早く終息させる鍵と言えます。

 さて視点を国内に戻しますと、2020~21年と新型コロナ感染の波が繰り返され、我が国は対人口あたりの病床数だけは世界一レベルにも関わらず、感染症病床の確保が進まず、欧米と比較すると僅かな波で、医療が逼迫してしまう脆弱性が露呈することになりました。当初は医療関係者へのねぎらいの言葉や心温まる応援も頂きましたが、緊急事態宣言が繰り返され、国民のストレスもピークになるや、一部マスメディアからは、『医療が逼迫するのは、民間医療機関がコロナを診ないせいだ!』と謂れなきバッシングを受けることもありました。たとえ病床数は多くても、対人口当たりの医師数、看護師数は先進国中でも最低レベルであり、医療現場のマンパワー不足がその根底にあることが、国民に正しく伝わっていないことはとても残念です。

 この医師マンパワーに関しては、『医師の働き方改革』制度のスタートが2024年4月と迫っています。『医師と言えども労働者であり、過剰な時間外労働は認めない』とされ、医師派遣の主な供給源である大学医局において時間外労働が厳密に管理されることになれば、恐らくは地域の2次救急病院や、急患センターへの医師派遣が滞ることになり、そうすると救急車は行き場を失い、都市部の3次救急外来へと殺到し、受診できない救急車が門前列をなして順番待ちをするような最悪のシナリオが懸念されます。

 今後「地域医療構想」、「医師の働き方改革」、「医師偏在対策」が、医療制度改革の3本柱となりますが、地域の救急医療体制については、一民間医療機関の努力だけで解決できる問題ではありません。各都道府県における医療計画の中で、行政機関、医師会、各病院団体、大学病院も含めて、関係者が各地域の救急医療体制の構築に向けて、しっかりと協議して具体的な対応策が必要です。地域医療を守るためにも、今年も病院団体を通じて様々な提言を行っていきたいと考えます。皆様のご理解とご協力、ご指導を賜りますよう、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

2022年1月
社会医療法人水光会 理事長
津留 英智

ご来院のみなさまへ

総合メニュー