謹んで新年のご挨拶を申し上げます。昨年は、8月10日福津市に線状降水帯が発生し、これまでに経験のない豪雨による災害が発生、病院前の2級河川《西郷川》がわずか1.8㎞上流で氾濫し、福津市の60歳代の男女が避難途中で川に流されお亡くなりになったほか、住宅も全壊が2世帯、半壊が146世帯、床上浸水が41世帯に上るなど甚大な被害を受けました。当院は幸い大きな被害からは免れましたが、普段からの防災対策の重要性を再認識させられました。
団塊の世代が後期高齢者となる大きな転換点「2025年問題」をなんとか潜り抜け、より深刻な試練となる「2040年問題」に向けた新たなスタートの年を迎えました。医療界は、これまで2025年問題に向けて、地域医療構想に基づき、病床機能の再編や数合わせを急ぐよう強く求められてきました。しかし蓋を開けてみれば、健康で活動的な高齢者が増えた一方で、新型コロナウイルスによる受療行動の変化により病床稼働は低迷し、物価高騰、そして人件費や委託費の増大といった「インフレの波」が、当初の予想を遥かに超え医療機関の経営は根底から揺さぶられるようになりました。
「2040年問題」とは、団塊ジュニア世代が65歳を迎え、現役世代の急減と高齢者人口のピークが同時に押し寄せる、日本社会にとっての「最大の難所」と言えます。総人口の約35%が高齢者となり、医療・介護のニーズが爆発的に増大する一方で、支え手となる生産年齢人口は激減します。試算によれば、働く人の5人に1人が医療・福祉従事者でなければ社会が回らないという、深刻な人材不足が予測されています。すでに地方から始まっている「医療インフラの崩壊」は、決して他人事ではありません。建築コストの高騰で病院の建て替えが困難になり、DX投資の財源も確保できず、後継者不在で診療所が消えていくと、このままでは、救急車を呼んでも受け入れ先がない、住み慣れた街で最期を迎えられないといった事態が、都市部においても日常化してしまいます。2040年という次の目標に向けて、私たちはこれまでの「病院完結型」の医療から、外来・在宅・介護をシームレスにつなぐ「地域完結型」の医療提供体制へと、抜本的なパラダイムシフトを成し遂げなければなりません。
「医療は地域社会の一番重要なインフラである」という信念は揺らぐことはありません。限られた人的リソースを最大限に活かすため、AIの活用、医療DXによる業務効率化にも取り組まなければなりません。タスクシフト(業務の移管)を推進し、また同時に、一人の患者さんを多職種で支える「総合診療力」と「多職種連携力」を強化し、病気を治すだけでなく、生活を支える医療を追求してまいります。 本年も、皆様のご理解とご協力、そして変わらぬご指導を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
2026年1月
社会医療法人水光会 理事長