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理事長あいさつ

宗像水光会総合病院 理事長 津留 英智

2024年を迎えて
~いまそこにある危機~

 新たな年を迎えることが出来ました。新型コロナの世界的パンデミックもようやく収束を迎える一方で、ヨーロッパでのロシアによるウクライナ侵攻は継続したまま、中東におけるイスラエルとハマスの新たな戦闘と、国際情勢は不安定さを増しており、加えて中国、北朝鮮の動きからは、紛争が東アジアに飛び火するのではと心配の種は尽きません。地政学的にもこれらは「今そこにある危機」として認識が求められており、所詮は対岸の火事であり我が国だけは何があってもどうせ米国が守ってくれるから大丈夫、などと平和呆けしていられる状況ではありません。次の米国大統領選の動きにも注視が必要ですし、国内の政局も混沌としており、我が国の行く末が案じられます。

 さて、人口減少、少子・高齢化問題の一つの道標とされて来た2025年問題をいよいよ来年に控え、今年は医療・介護・障がい福祉の同時改定、医師の働き方改革を含めた、第8次医療計画等々の変革の年を迎えます。医療DXの関係で、診療報酬改定が6月に後ろ倒しとなりますが、新たな入院医療体系が示され、高齢者救急の受け皿としての、新たな特定入院料(病棟機能)の在り方、その今後の推移をしっかりと分析しつつ、次の道標である2040年を見据えて、当院がこの地域の医療提供体制の中で果たすべき役割をしっかりと見直し、常に変化に対応していかなければなりません。

 2023年の厚労省医療経済実態調査、同年に実施された3病院団体による病院経営定期調査の結果では、病院の経営収支が極めて悪化していることがデータとして明らかとなり、厚労省の中医協資料でも、令和5年度末には更に経営収支が悪化していく予測データまでが示されました。職員賃上げに必要な財源がある程度確保されたとはいえ、医療機器の更新や病院建て替え等の設備投資に充てることが可能な診療報酬本体の財源は無く、引き続き将来の見通しが極めて厳しい状況には変わりません。また医師の働き方改革が、医療現場にどのような影響を及ぼすかも極めて不透明であり、特に規制緩和で「宿日直許可」を取得する事が出来た2次救急医療機関が、夜間の救急搬入受け入れの体制を維持できないとなると、夜間の救急搬送先が確保できずに助かる命が助からないと言う危うい状況が懸念されます。

 また、地域差は存在しますが、人材確保の問題は、医師だけではなく、看護師、薬剤師、ありとあらゆる医療専門職種から、看護補助者、介護職、事務職まで、医療・介護・福祉を支える全職種でマンパワー不足は深刻化しており、今や他業種との人材争奪戦の様相を呈しています。職員の生活は守りつつも、その賃上げ財源以外の医療収益が確保できないとなると、どのような事態になるのか、それでも我々は患者さんにその不利益が及ばない為の努力を継続しなければなりません。本年も、地域医療を守る為に各病院団体を通じて、様々な活動を行っていきたいと存じます。皆様のご理解とご協力、ご指導を宜しくお願い申し上げます。

2024年1月
社会医療法人水光会 理事長
津留 英智

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