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泌尿器科

泌尿器科は主に尿路(腎臓・尿管・膀胱・尿道)、男性性器(前立腺・陰嚢・精巣・陰茎など)および副腎などの後腹膜臓器の病気を扱う診療科で、手術が中心になりますが薬による内科的な治療や抗がん剤による治療なども行います。代表的な病気には、副腎腫瘍、腎臓がん、尿路結石、膀胱炎、膀胱がん、前立腺肥大症、前立腺がん、尿失禁などがあります。男性患者さんがほとんどという印象があるかもしれませんが、実際には3分の1は女性患者さんです。手術に関しては、現在では開腹する手術はほとんどなく、ロボットを用いたロボット支援手術、腹腔鏡を用いた腹腔鏡手術、経尿道的な内視鏡手術がほとんどを占めています。

非常勤医のご紹介

  • 富崎 一向

施設認定

  • 社団法人 日本泌尿器科学会 専門医制度関連教育施設

主な疾患の治療方針

基本的には学会等から出されているガイドラインなどに沿った標準的な治療を行っていますが、年齢や患者さん本人の背景、状態、希望などに沿ってそれぞれ最適な治療を提案しています。

ロボット手術について
350泌尿器科では2022年に国産手術支援ロボットhinotoriを導入しロボット支援手術を開始しました。前立腺がんに対する前立腺全摘除から開始して順調に手術件数が増加しています。ロボット手術のメリットは傷が小さく、出血や合併症が少ないため低侵襲であることはもちろんですが、精密な動きができるため前立腺癌の手術においては、勃起機能の温存や尿禁制の保持に有利であるとされています。 前立腺癌は増加傾向が続いており、男性においては罹患数第1位の癌となっています。前立腺癌は転移がない状態で治療できれば予後は非常に良い癌ですので早期に発見し治療につなげることが重要と考えています。 現時点では前立腺癌に対する前立腺全摘除術のみで使用していますが、今後は腎癌や腎盂尿管癌に対する手術へも広げていく予定としております。
下部尿路障害
尿失禁、間質性膀胱炎、前立腺肥大症、過活動膀胱、神経因性膀胱をはじめとする下部尿路障害の診療を行っています。各種薬剤を使用した治療を中心としながら、必要に応じ外科的治療を行っています。女性の腹圧性尿失禁にはTOT手術という、尿道と腟の間に幅1㎝のポリプロピレン製のテープを通して尿道を支える手術を行います。手術自体は30分程度の比較的侵襲の少ない手術です。間質性膀胱炎に関しては、水圧拡張術やジメチルスルホキシドという薬剤の膀胱内注入療法などを行っています。

前立腺肥大症に対しては最新のレーザーQuanta Cyber TMを用いた、ツリウムレーザー前立腺蒸散術(ThuVAP)を施行しています。 350 ツリウムレーザー(写真)は、水分子に対する吸収率が高く、蒸散効率が非常に良く一定に保たれることが特徴です。レーザーの組織への深達度は0.1-0.2mmと浅く術後の組織のむくみがすくないことや、周辺組織への影響も少ない事、また手術中の出血も非常に少なく安全に手術が施行できます。また最高出力200Wのハイパワーで蒸散効率が非常に良いため非常に大きな前立腺に対しても有効です。本来は手術が望ましいのに抗凝固薬を飲まれていたり、高齢であるという理由で敬遠されていたような患者さんでも安全に手術が行えるようになりました。

過活動膀胱は薬物治療が中心となりますが、薬剤で治療効果が十分でない難治性過活動膀胱に対してはボツリヌス毒素の膀胱壁内注射や仙骨神経刺激装置植え込み術も希望に応じて施行しております。

*ボツリヌス毒素膀胱壁内注射*
ボツリヌス菌が出す毒素で筋肉を弛緩させる効果があります。美容領域でのしわとりや筋肉の痙縮など多く利用されており、過活動膀胱の際の膀胱壁の筋肉の過剰な運動を抑えるために使用します。

*仙骨神経刺激装置植え込み*
排尿に関係している仙骨神経に刺激をあたえることによって過活動膀胱による頻尿や切迫性尿失禁を治療する方法です。薬での治療が十分でない方が適応になります。 心臓ペースメーカのような装置を体内に植込み持続的に刺激を行う方法で、日本では2017年9月から健康保険が適用されました。
腫瘍性疾患、泌尿器癌
泌尿器科の対象となる副腎腫瘍、腎盂尿管がん、腎がん、前立腺がんなどは開腹で行う事は最近では珍しく、ほぼ全例を腹腔鏡かロボット支援下で行っています。腎がんにおいて通常4cm未満で部分切除が行われる事が多いですが、大きさにこだわらず可能な場合は部分切除を選択し可能な限り腎温存を目指しています。

膀胱がんに対しては、早期の場合には経尿道的膀胱腫瘍切除術、浸潤がんの方には腹腔鏡下膀胱全摘除術、及び尿路変更術を施行します。
尿路結石症
尿路結石症の治療は、結石の大きさや位置、数等に応じて適切な治療方法を選択します。対外衝撃波結石破砕術(ESWL)は月曜から土曜日まで、日帰り、1泊入院などご希望に合わせて施行可能です。結石によっては内視鏡での治療のほうが適している場合もあります。そのような場合や、体外衝撃波では効果がなかった場合、結石を取り除いて早く治したい方にはレーザーを使用した内視鏡手術(TUL)をお勧めしています。
女性泌尿器科
女性泌尿器科というウロギネと呼ばれる分野の治療も行っております。子宮や膀胱、直腸が下がる病気を「骨盤臓器脱」といいます。この治療法として腹腔鏡下仙骨膣固定術という手術があります。腹腔鏡を用いてメッシュによって膣をつり上げて仙骨に固定する方法です。従来の経腟的なメッシュ手術にくらべ合併症や再発が少ないことが利点です。

*腹腔鏡下仙骨膣固定術*
加齢や出産などで骨盤の筋肉が弱くなり膣から臓器が脱出してくる骨盤臓器脱に対する手術です。メッシュを用いて膣尖部、または子宮頸部を仙骨に固定する手術で、2014年に保険治療としてできるようになり、当院では2015年から開始いたしました。全身麻酔が可能な骨盤臓器脱の方、過去に他の骨盤臓器脱の手術を受けて再発した方、子宮を摘出した後の膣断端脱がある方などに適応があります。
腹腔鏡手術
腹腔鏡下前立腺全摘除術、腹腔鏡下膀胱全摘除術、腹腔鏡下膀胱部分切除術、腹腔鏡下尿膜管摘出術、腹腔鏡下腎盂形成術、腹腔鏡下腎部分切除術、腹腔鏡下腎摘除術、腹腔鏡下腎尿管全摘除術、腹腔鏡下副腎摘出術などでほぼすべての泌尿器科手術を腹腔鏡で行います。開腹手術に比べると傷の痛みなども少なく、手術時間の短縮、出血量の減少が得られ低侵襲の治療が可能です。

治療機器

体外衝撃波結石破砕装置(ESWL)

腎・尿管結石でお悩みの方へ

磁力で振動させ発生する襲撃波を患者さんの結石に向けてあてます。
治療中の痛みがほとんどなく、より早く効果的な治療ができます。

350 体が傷つきません
治療時間が短く1時間程度で終わります
痛みが少なく、無麻酔で行えます
副作用・後遺症がほとんどありません
治療後すぐに日常生活への復帰が可能です
低侵襲のため再発の場合の治療法としても最適です
健康保険が適用されます

前立腺肥大症レーザー治療器(ツリウムレーザー)

350このレーザーは前立腺に対し従来から行われている一般的な手術療法・経尿道的前立腺切除術(TUR-P)に比べ、身体への負担が少ないだけでなく蒸散術、核出術の両方が行える治療法です。
術中・術後の出血リスクが非常に低いです。
術後の痛みが少なく、速やかな回復が見込まれます。
抗血栓治療中の患者さんへも可能です。
術後の男性機能への影響が少ないです。


検査機器

MRI-超音波画像融合前立腺生検システム「KOELIS TRINITY」


 当院ではKoelis社のTrinityを導入し2023年7月より開始しました。MRI-超音波画像融合前立腺生検は従来の方法と比べ、より正確にがん病変を診断できるとされています。 従来の超音波のみを用いた生検は、がんの正確な位置を把握することが難しく、前立腺全体にまんべんなく針を刺して行います。1度の生検でがん組織が見つからなかった場合、がん組織がなかったのではなく、針にがんが当たらなかった可能性もあります。 今回開始したMRI-超音波画像融合前立腺生検では事前に撮影したMRI画像と術中に行う超音波の画像を融合することで、がんが疑われる部位をリアルタイムで確認し、正確に疑わしい部位から組織を採取することができるため、より正確に前立腺がんの診断ができるようになりました。

手術症例(2022年)

手術名 症例数
膀胱の手術 膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術) 92
腹腔鏡下膀胱悪性腫瘍手術 2
腹腔鏡下膀胱脱手術 7
腹腔鏡下尿膜管摘出術 2
腹腔鏡下膀胱部分切除術 1
経尿道的電気凝固術 11
膀胱結石摘出術(経尿道的手術) 11
膀胱悪性腫瘍手術(切除) 1
膀胱悪性腫瘍手術(全摘) 1
膀胱瘻造設術 3
腎・尿管の手術
腹腔鏡下腎(尿管)悪性腫瘍手術 10
腹腔鏡下腎摘出術 1
経尿道的尿管ステント抜去術 94
経尿道的尿管ステント留置術 125
経尿道的尿管狭窄拡張術 5
経尿道的尿路結石除去術 92
経皮的腎膿胞穿刺術 2
経皮的腎(腎孟)瘻造設術 11
経皮的腎(腎盂)瘻拡張術 2
尿管皮膚瘻造設術 1
前立腺、尿道の手術
腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術 33
経尿道的レーザー前立腺切除術・蒸散術 62
経尿道的前立腺手術 1
尿道ステント前立腺部尿道拡張術 4
尿道狭窄内視鏡手術 3
尿道異物摘出術(前部尿道) 1
尿道結石摘出術(前部尿道) 2
外尿道腫瘍切除術 2
尿失禁手術(ボツリヌス毒素によるもの) 1
その他の手術
陰茎悪性腫瘍手術(陰茎全摘) 1
陰嚢水腫手術 5
精巣外傷手術(陰嚢内血腫除去術) 2
精巣摘出術 6
包茎手術 6
癒合陰唇形成手術 1
総計(ESWL除く) 604

メディア情報

掲載日 メディア医師
2020年3月29日(日)
西日本新聞 朝刊
「前立腺治療のいま」鼎談
泌尿器科部長 寺戸 三千和
原三信病院 名誉院長 内藤 誠二教授
産業医科大学 診療科長 藤本 直浩教授

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